○「見えない」ビジュアルマーカによる実世界物体とのインタラクション
ユビキタス社会ではユーザの周囲のさまざまなモノをシステムが検知し,
その状況に応じたサービスを提供することが望まれます.
モノ(対象物)が何であるかをシステムが知るために,
無電源・非接触の電波タグ,
アクティブタイプの非接触電波タグ,
光源の点滅パターンでIDを表現するタイプのアクティブタグなどを使う方法が提案されていますが,
対象物に埋め込まれるタグに電源を要したり検知距離が短いなどの問題がありました.
CyberCode や
ARToolkit に代表されるビジュアルマーカを
画像認識する手法は無電源・低コストでモノの移動にも対応できるというメリットがありますが,
多くは白黒パターンでIDを表現するビジュアルマーカを
この写真のように実世界に配置すると景観やモノの美観を損ねるという問題がありました.
そこで本研究では,透明な
再帰性反射材を使ってモノにマーカパターンを塗布してビジュアルマーカを構成し,
そのマーカを我々が開発したObjectCam2で
認識することで,
目には見えないが機械には見えるビジュアルマーカを実現しました.
ObjectCam2は赤外線LED照明の明滅をコントロールすることで,
通常のカラー画像(「目に見える」光景,写真左)に加えて
カメラ組込みの赤外線照明への反射光を含むカラー画像(写真右)を高速に取得できます.
マーカを構成する再帰性反射剤は入射した方向に光を反射させるという特性を持っていますので,
これらの2枚の画像の差分を取る(引き算する)ことで,
輝度の大部分が赤外線照明への反射光からなる画像(左図(a))が得られます.
このデモビデオ(QuickTime形式,
DivX形式AVIはこちら)は,
システムがチラシやカレンダービジュアルマーカ情報を読み取り,
関連するWebページを表示する様子を示しています.
このように,実世界のさまざまなモノに「見えない」マーカでIDを与えることで
より便利で精神的に豊かな生活が期待できます.
(図や写真をクリックすると拡大します)
本研究は関西学院大学理工学部情報科学科の
2007年度の注目卒業研究に選ばれました.
○参考文献
-
[能田09]能田雄規,河野恭之.
不可視マーカを用いた実世界物体の認識,
情報処理学会論文誌,
Vol.50, No.12, pp.2889-2893, Dec 2009(テクニカルノート).
-
[Nota08]Y. Nota, Y. Kono.
Augmenting Real-world Objects by Detecting ``Invisible'' Visual Markers,
Adjunct Proc. UIST2008
(21st ACM Symposium on User Interface Software and Technology), pp.39-40,
Monterey, CA, USA, Oct. 2008.
-
[能田07] 能田雄規,河野恭之.
不可視なビジュアルタグを用いた実世界対象からの情報提供システム.
情報処理学会インタラクション2008, ポスター, Mar. 2008.
○ビデオ
○ポスター